読売テッラvol.30
読売テッラvol.30
~チップ~
外国ではもはや当たり前とも言える「チップ」
国内ではありえない話だがこれを払うか払わないでは
サービス内容にかなりの差が生じる国は多い。
日本文化でサービス業において「チップ」とは
絶対ではなくむしろ「チップ」を頂ける事は年々減少傾向にあると聞く
私の見解では真面目な日本人の国で商品の値段は高くても安くても
「良いサービス」を受ける事は前提であるから
なお更、「チップ」を頂くには自分が持つ100%の力でお客様にぶつからねば
お財布の紐は緩まないではなかろうか・・?
私も以前に勤めたレストランは「リストランテ」だったので
そういった機会もあったが、何故かしら私の場合は違った。
週に何度もお越し頂く独りマダム。
オーダーから接客は決まっているかのように私が担当した
むしろこの方にゲストとの距離感や会話を学ばせて頂いた
と言っても過言ではない。
お客様の顔色やメンタルなどホンの少しの違いが
感じ取れるほど集中して、お客様の体調なども考慮しつつ勧める料理の内容も若干いつもより
違った趣向の物を交えながら会話を変えお客様のコンディションや感性を感じ取る。
実際に私一人の仕事では中々難しい所があり、そんな状況を常にサポートするのが上司や先輩でした。
独りマダムは俗に言う「芸術家」で無知で若い私には会話や知識で
魅了する事ではほぼ勝算が無かった。
私にはとにかく相手の事を深く考えて仕事をするしか打つ手は無かったのです
それでも毎度、いらしてはたわいもない話から出張や取材に行った時の「芸術家」ならでは
の観点から繰り出す独創的な話は他では聞けまいと思い聞いていた。
マダムも次第に「私」という人間に警戒を解き
理解を示すようになられた
ある日の晩、帰り際に「コレ・・」と言って
ビニール袋一杯の色んな食べ物を差し出され
「ホントはいつもチップをあげたいけど・・」と言い
マダムは帰って行った。
おそらく見習いだった私の生活の苦しさを見抜いての優しさだったのかもしれない
だけどお金を渡すだけが「チップ」ではない。
スタッフ皆で分けるのが決まりだけど、この日は
「お前のだ」
と上司は肩を軽くたたいてくれた。
~この物語はフィクションです~
関連記事